魔法使いの雑曲集

魔法使いの雑曲集

亨と護の事故後、入院中の些細な話

  その子は事故に遭ったのだと話してくれた。 白い包帯が痛々しかったけれど、一般病棟に移されたのだから大分安定してきているということだろう。和希(かずき)はすぐに、その子を好きになった。 その子の名前は、トオルくん、といった。  季節の変わ...
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或る天才の大晦日の独白

  正月になると思い出す。 弟分と初めて真剣に向き合った、あの年の最後の日を。  一体どうしてこうなった。 松原聖は自分のテントで泣きべそをかいている、最近できたばかりの義弟に手を焼いていた。「……だーかーら、桜だって悪気があったわけじゃね...
魔法使いの雑曲集

魔法使いによる四重奏

  仮にどんな出会い方をしたとしても、決して分かり合えないであろう奴というのは、哀しいことに恐らく、誰にでもいる。育った環境が違う別の個体なのだから致し方ない。少し歩み寄ってみて、ああ、此奴とは分かり合えない、そう感じたら双方のためになるべ...
魔法使いの雑曲集

魔王陛下の食卓の音楽

 第一章  室町友恵は、今月の健康診断結果からある一名のデータを取り出し、それを確認して、はぁ、と深いため息をついた。「これは、なんとかしなければならないわねぇ……」    ❃❃❃❃❃❃❃❃  ある日の昼。表向きは移動興行集団、その実態は諸...