忘却のニュンフェの正歌劇

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第7話 SOS

 ほたるは、素っ気ない風に見えるけど、親切だし、裏表がない。 美鈴は、意外と芯の強い性格で、根っからのお人好し。 このふたりが他人の悪口とか言ってるところなんて、見たこともないし、想像もできない。ふたりとも、悪意とは無縁な気がする。 こんな...
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第6話 再現

 SLWハイスクールには『異能実技』という科目がある。 異能実技は異能に合わせた個別指導。生徒と類似した異能を持つ捜査隊員と二人一組になって、個々の異能の扱い方を学ぶ。 同時刻に各々別の場所で行われるのだから、当然、他のクラスメートの実技指...
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第5話 アイツ

 昼。食堂の真ん中のテーブルにて。 SLWハイスクール一年一組、出席番号四二番。山本平蔵はにこにこと憎めない笑顔を浮かべる友人に、どう切り出すべきか迷っていた。隣でハムカツをつついていた、出席番号三八番、村上陽一もおそらく同じ心境であったろ...
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第4話 ナンパ男

 佐倉亨の朝は早い。生活リズムが極端に整っている白髪の少女に合わせること五ヶ月。季節が移ろい布団から抜け出すのが苦でなくなったのもあるかもしれない、今日もいつもと同じ、五時少し過ぎに目が覚めた。ベッドから天井を見上げつつ、ずいぶん長く彼女と...
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第3話 帰国子女

 長いようで短かった夏休みが明けて。 亨はいつも通り、朝六時に待ち合わせていたほたると登校した。夏休みもほぼ毎日、ほたるの特別講義のため学校には通っていたので、新学期だからと気持ちが改まるものでもなく、本当に、ここ四ヶ月ほどでできあがってい...
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第2話 ほたる

 小野ほたるは、不思議な少女だ。  さらさらの白い髪に、すみれ色の瞳。透けるような肌と小さくて整った口、鼻はまるで人形のようだが、黒目がちの大きな瞳は彼女の意志の強さを表しているようだった。 日本人離れしたその容姿が気になって、クラスメート...
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第1話 牛丼

 午前二時前。歩行者はおらず、車道を制限速度をオーバーした自動車がたまに流れて行く以外は、静かな深夜のオフィス街。 SLW第一捜査隊恩田班は、市民が寝静まっているそんな時刻であっても、特殊警察組織として果敢に活動していた。 路地に逃げ込んだ...
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プロローグ 誰

 いつも決まった時刻に目を覚ます。 小野ほたるにとって、それは午前五時。部活動はないし、学校まで歩いて数分の寮で生活している生徒としては少し早いかもしれないが、習慣になってしまったものは変え難い。それに、早起きは幾らかの得というから変える必...