忘却のニュンフェの正歌劇 プロローグ 誰 いつも決まった時刻に目を覚ます。 小野ほたるにとって、それは午前五時。部活動はないし、学校まで歩いて数分の寮で生活している生徒としては少し早いかもしれないが、習慣になってしまったものは変え難い。それに、早起きは幾らかの得というから変える必... 2017.05.01 忘却のニュンフェの正歌劇魔法使いの交響曲シリーズ
幽霊少女の奏鳴曲 エピローグ タージ・マハル 白く輝く霊廟を仰ぎ、李紅元は「ほう」と感嘆の息を漏らした。「何度も訪れていますが、いつ見てもやはり美しいですね。心が洗われる気がしますよ。そう思いませんか、風音?」 隣に立つ風音は、確かに荘厳だとは思ったがあまり感銘は受けなかった。 ただ... 2016.08.01 幽霊少女の奏鳴曲魔法使いの交響曲シリーズ
幽霊少女の奏鳴曲 第29話 ティーパーティ 「少し、言葉に気を使うべきですよ、リヒト。彼女は大変混乱していました」 優雅な所作でカップを手に取り紅茶をすすって、ベアトリクスはそう言った。 理仁は叱られた子犬のようにしょぼんと、「反省している……」と答えた。「無事であるというのに、最初... 2016.08.01 幽霊少女の奏鳴曲魔法使いの交響曲シリーズ
幽霊少女の奏鳴曲 第28話 ヒーロー 目を覚ますと、そこはどこかのベッドの上で、「ミーナ!」と駆け寄ってくる紅眼の少女がいて、床では銀髪の青年がこちらに背を向けて、たくさんの端末に囲まれていた。ああ、まだ終わっていないんだとなんとなく理解した。「大丈夫? まだ寝てなくちゃ……... 2016.07.31 幽霊少女の奏鳴曲魔法使いの交響曲シリーズ
幽霊少女の奏鳴曲 第27話 ブラックアウト アニルが理仁に斬りかかろうとした瞬間、映像が乱れた。「領域を乗っ取られた!」聖が叫び、ミーナは友人が採った恐ろしい行動に気づいて青ざめた。「アンジュよ! あの子、避難先からあんたの支配権を奪ったのよ!」 ミーナの言った通り、別の領域に避難... 2016.07.28 幽霊少女の奏鳴曲魔法使いの交響曲シリーズ
幽霊少女の奏鳴曲 第26話 デリート 幼い頃から仮面を被って生きてきた。 ニコニコと笑顔を振りまいて、実に『子どもらしい』子どもを演じてきた。 その方が楽だと知っていたから。 職人だった父は、息子のアニルから見てもひどく頑固で融通がきかなくて、大事な客に対しても愛想笑い一つせ... 2016.07.25 幽霊少女の奏鳴曲魔法使いの交響曲シリーズ
幽霊少女の奏鳴曲 第25話 マツバラ ミーナの研究室の前に到着した十兵衛とミーナは、どうしてドアが叩き壊れているのかと顔を見合わせたあと、そっと部屋を覗き込んだ。持ち込んだ端末に囲まれて、床に座り込んでいる派手な銀髪の男。十兵衛は「聖さん!」と駆け寄り、ミーナは、「へえ、あん... 2016.07.23 幽霊少女の奏鳴曲魔法使いの交響曲シリーズ
幽霊少女の奏鳴曲 第24話 アクセス 理仁が太刀を振り下ろそうとした瞬間、世界が変わった。 白い迷路のような世界で、目の前のアニルが醜く嗤っている。「改正法はまだ扱い慣れていないと見ました」「……ッ!」 アニルの手に現れたピストルが理仁の頭部を狙っている。 理仁は身をひねって... 2016.07.20 幽霊少女の奏鳴曲魔法使いの交響曲シリーズ
幽霊少女の奏鳴曲 第23話 ケッサク 強力な異能を操作でき、かつ、不老不死の性質を有する、特殊な異能者たちが存在する。 彼らは学術上〈結晶型〉能力者と分類されている。 異能者を異能者たらしめる特殊な細胞・Sn細胞が〈結晶化〉し、それが彼らに強力な異能と不老不死の身体をもたらし... 2016.07.18 幽霊少女の奏鳴曲魔法使いの交響曲シリーズ
幽霊少女の奏鳴曲 第22話 ファイヤー あーあ、馬鹿だなぁと、自嘲する。 今さら気づいても遅いのに。もう、あの子を望む資格なんてないのに。 どうせあの子が戻ってこないのなら、このまま全部消して、逃げちゃえばよかったのに。頭の片隅で数分前までの自分の影が勿体なさそうにため息をつく... 2016.07.15 幽霊少女の奏鳴曲魔法使いの交響曲シリーズ