幽霊少女の奏鳴曲 第21話 テンサイ 桜は白い廊下を走りながら考える。『へらへら笑って、なにも恨んだことありませんみたいな顔しちゃって! みんながみんなそうやって幸せに生きてきたわけないでしょ!』 そうだ、みんながみんな、同じなわけがない。自分の子供時代が幸せだったかと聞かれ... 2016.07.12 幽霊少女の奏鳴曲魔法使いの交響曲シリーズ
幽霊少女の奏鳴曲 第20話 パスワード 桜の手によってラックの下から救い出されたミーナは、ぴくりともせずただ真っ直ぐに、動かなくなった人形を見つめていた。その様子は、彼女自身が、心を失って人形になってしまったかのようだった。 侵入者たちを追い払った理仁と十兵衛は、桜とともに聖に... 2016.07.08 幽霊少女の奏鳴曲魔法使いの交響曲シリーズ
幽霊少女の奏鳴曲 第19話 モンスター 目の前の女の子は、今にも泣き出しそうなのに、どうしても我慢して泣けないという顔をしている。 彼女には、女の子に言いたいことがあった。 けれど、彼女にその言葉はプログラムされていなかったから、言えなかった。 女の子はぽつりと呟いた。「絶対... 2016.07.04 幽霊少女の奏鳴曲魔法使いの交響曲シリーズ
幽霊少女の奏鳴曲 第18話 サイレン 階段で繰り広げられる緋と碧の結晶型能力者同士の戦いと、機械仕掛けの少女が人間の女性の腕をひねり上げるという異常な光景を目の当たりにして、追いついた十兵衛は一瞬、どちらから先に手をつければいいのか迷った。 しかし、「十兵衛、ミーナを!」とい... 2016.07.01 幽霊少女の奏鳴曲魔法使いの交響曲シリーズ
幽霊少女の奏鳴曲 第17話 データ 客席からは悲鳴があがり、逃げ惑う観客たちが出口に集中して押し合いへし合いの大混乱に陥っていた。 それには露ほどの関心も示さず、タウフィックは唸り声をあげながら、自分の腰くらいまでの身長しかない少年に突進して、電流を纏わせたサーベルを振りか... 2016.06.30 幽霊少女の奏鳴曲魔法使いの交響曲シリーズ
幽霊少女の奏鳴曲 第16話 ヒロミツ ずるずるとパイプを引きずって歩く人形の少女を、所員達は遠巻きに見やった。 ふらふらと倒れこみそうな不安定さでありながら、その足取りに迷いはなかった。 アンジュはなにもない虚空を見つめながら、ひたひたと歩く。 ミーナと一番長い時間をともに... 2016.06.27 幽霊少女の奏鳴曲魔法使いの交響曲シリーズ
幽霊少女の奏鳴曲 第15話 パフォーマンス 夢を見ていた。 ステージの上でぽろぽろと涙を零す女の子と、高笑いを上げる男。 女の子の黒い癖っ毛には艶がなく、ずっと眠っていなかったのだとわかる。(泣かないで、ミーナ……) 声にならない声で訴えかける。女の子の耳には届かない。(助けに行く... 2016.06.24 幽霊少女の奏鳴曲魔法使いの交響曲シリーズ
幽霊少女の奏鳴曲 第14話 カンパイ これで自分の脅威となる者はいなくなった。 これからは自分の思い通りになる、そう思っていた。 遺族の方を振り返り、自分を睨みつける、あの娘を見つけるまでは。 元同僚と同じ黒い癖っ毛に、よく似た目元。 その目が自分を射殺さんばかりに睨めつけて... 2016.06.22 幽霊少女の奏鳴曲魔法使いの交響曲シリーズ
幽霊少女の奏鳴曲 第13話 アニル そこに並べ立てられる商品は、どれも風音にとっては面白くもなんともないオモチャだった。 同じ顔を世界中の防犯カメラから不正に得た映像から九八.二パーセントの確率で抽出するソフトウェアに、薬物を彫刻のイミテートのように加工する技術。もはや研究... 2016.06.20 幽霊少女の奏鳴曲魔法使いの交響曲シリーズ
幽霊少女の奏鳴曲 第12話 ミーナ 係員によってステージ全体を見渡せる席を示された№1は、自分の左隣に風音を座らせる。 左肘を肘掛に乗せて、風音の顔を覗き込んだ。「どうです、風音。あの『時代の寵児』とやら、なにか企んでいるようでしたが」「さすがです、№1。どうしてわかったの... 2016.06.16 幽霊少女の奏鳴曲魔法使いの交響曲シリーズ